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フランス語でおいしいはセ ウ”ォン

あとがきに、創作活動が実質10年しかなかった(40代で召されてしまった)のに膨大な作品を残した、とあった。日本で言えば明治のころの作家でルパンの作者ルブランと同じ頃なので時代ギャップを感じず、短編集なのでラク。田舎もの1、都会もの2、怪奇ファンタジーもの3の、三編にまとめられているとのこと。そのうちに読もう.
作者の出身でもある、ノルマンディーの田舎の風景、農民の暮らし方や、女の人の社会的立場から来る悲劇とか写実的で、かといって暗いばかりじゃなくて笑える話もアり、フランス式のユーモアが利いている。
印象に残った作品は、「紐」「悲恋」「ピエロ」、、
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# by mgal2o4 | 2007-04-27 10:11 | 短編

知床の岬に

花見に来る母が家にいて退屈しないように、と思って借りた本。
森繁さんは私がテレビで見た時はちょっとボケたエッチなおじいさん、という印象だったので、この本を読んで驚いてしまった。
母とも話したのだが、本文中の、嵐で遭難した漁師の、木切れの話はとても興味深かった。見かけでなく、心で美的に生きて行く人間でいたい。
そう語る森繁さんに共感するとともに、そういっていた父を思い出してしんみりした。
戦争に誰もがしかたなく出向いた時代に、自分は人殺しだけはしたくない、と、必死の思いで勉強して、NHKのアナウンサーとして満州に渡った事なども、時流と世相に流されまいと人一倍努力する姿勢に背筋がのばされる思いがした。タイトルはバックボーン的存在だった(変?)奥様がそらんじた聖書の一節より。
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# by mgal2o4 | 2007-04-05 16:22 | 随筆エッセー

もし、、じゃなかったら、、

養老先生がおすすめの三部作だったので早速読んだ。
「悪童日記」はどう自分の脳味噌に納めていいかよく理解しかねる内容だった。
きれいな、もっともらしい詞で、戦争をくくることが叶わないとしたら,これ以上、醜く汚く悲惨な、信じられない展開は、ない、、。
事実を感じ取る為に、子供たちは「訓練」する。
その、主観のない、事務的な、冷静に見える文体が、まるでテキストを読んでいるような印象を受ける。
3冊は一気に読んだ方がいい.一気に読める。
三作目で、複雑な糸の結び目は解けたようにも思うのだが、悲しい余韻が今も脳味噌にのこっている、、、。もし、、じゃなかったら、、_d0109900_14464930.jpg

# by mgal2o4 | 2007-03-17 14:47 | アゴタ=クリストフ

道をゆく者

 著者が所有している茶人の書簡を、利休の側で仕えていた三井寺の本覚坊に設定して、著者独自の見識で探った、利休の死の謎解きと周辺の事情が綴られた創作本「本覚坊遺文」を読んだ。
 読みながら、背筋が伸びる思いがした。
 師、とか上様、とかよばれるものは、こうでなくてはならないと思うのだ。こそこそ逃げ回って立ち回って、姑息な行動を潔しとせず、一流の美意識で人生を全うする、、死が隣り合わせでありながら、人の死を踏みつけにせずに真摯に戦って来た戦国武将に対する著者の敬意が本覚坊の詞になって読み手に伝わってくる。
 日本史の高校時代の教師も仰っていた。利休が切腹を申し渡されたのは、太閤の横暴ではなく、武士として相手を見ていたからだ、と。切腹という特権は武士だけが拝暢できる特権であると。だから利休はありがたく死を頂戴仕った、ということになる。
 サムライの美学は死と隣り合わせなのだ。こういう美意識は平和な時代には滑稽だろう、でも日本人はこういった血が少し入ってるからこんな話は廃れないし憧れるしまあ,こんな風に、自分にとっての美学を磨くのを怠りたくないと思うのだった、、。道をゆく者_d0109900_10472996.jpg

# by mgal2o4 | 2007-03-14 10:48 | 歴史もの

「額田女王」井上靖

めかたじょおう、って読むのではありませんよ。ぬかたのおおきみ、です。
百人一首の「あかねさす 紫野行き しめの行き 野守は見ずや 君が袖振る」にうたわれる、中大兄皇子と大海人皇子に愛された女性、で有名です。
先達大化の改新の新事実という番組で、じつは蘇我馬子は天皇を守ろうとしていた忠臣であったのが、唐に偏りがちだった為,日本国として独自の支配体制を作りたいと思っていた中大兄皇子と鎌足がおこしたクーデターで、大化の改新、という律令制度が整うのは実は何年か後。そのあいだに白村江の戦いでの敗北があったから唐からの侵略に備えての法整備だったということで納得のいく内容でした。これと照らし合わせて読んだのですがとても面白かった。先の大戦とだぶるあたりも身近い。中大兄皇子は戦の為に徴兵したり、遷都したりするのだがその度に人々や、時の天皇(母親)が右往左往し噂に翻弄される記述など眼に浮かんでくるのよね。
奈良の地図も引っ張って来てみながら読みました。
額田女王を斎王みたいな設定でとらえてあるのが説得力ありました。
そういう人物なら天皇に愛されたり、自由な女でいられた様にも思われるし、、、
日本史のオベンキョーになります。

# by mgal2o4 | 2007-03-13 11:53 | 歴史もの